ゴールデンカムイ、ついにアニメ化しましたね。とか言いながら、まだ読者歴ひと月程度のにわかなのですけど。
あるブログを読んで読者になった身として、また元ネタの方とは別の視点で魅力を伝えてみたいな、と。
中でも、ヤンメイと同じく国際結婚している人に読んで欲しいのですよ!中国人と結婚した方には特に楽しんで貰えると思うんですよね。
今回は漫画「ゴールデンカムイ」の面白さ、国際結婚との共通点についてのお話。考えてみれば初めての本レビュー。面白さや熱さが伝わりますように。
ゴールデンカムイとは
週刊誌「ヤングジャンプ」で連載中の野田サトル著の漫画です。
ゴールデンカムイ、舞台は日露戦争後の北海道。時は明治、満州からの帰還兵である「不死身の杉元」こと杉元佐一(すぎもとさいち)とアイヌの少女アシリパの出会いから物語は始まります。(上の表紙の人物が杉元)
以下あらすじ
幼なじみの戦友の未亡人、梅子の難病の高額な手術代のため、北海道で砂金採りをする杉元。日露戦争で武功抜群の英雄であった彼だが、上官に重傷を負わせて恩給を受けられなかったのだ。
そんな中、莫大なアイヌの隠し金塊のウワサを耳にし、杉元は一攫千金を狙った危険な金塊争奪戦に身を投じてゆく。
一方、たまたま熊に襲われていた杉元を救ったアイヌの少女アシリパ。その金塊が元で命を失った父の死の真相に迫る為に、杉元と協力して共に金塊を追うことに。
北海道の自治独立の為の資金として、陸軍の精鋭部隊(のハズレ者集団)や旧幕府軍の土方歳三の一党がそれぞれの目論見で金塊を狙うなか、杉元とアシリパ、その仲間達も金塊のありかを追う旅を続ける、といったのが大まかなストーリーです。ざっくり言えば冒険活劇ですかね。
基本的に、金塊を巡る命懸けの争いなので、血生臭いシーンも多いです。生きる為の狩猟、解体シーンも描かれるのでそこも要注意です。
異文化交流の物語
元々は千日さん(id:sennich)のブログに紹介されていて本作品を知りました。千日さんは「心が壊れてしまった人達の再生の物語」である、と語っていまして。なるほど、確かに。そう読むか、深い!とても知的な受け取り方です。
他方ヤンメイは面白さを感じたところが全然違います。ヤンメイは、杉元とアシリパの関係、特に食べ物をめぐる部分に、自分と妻を重ねて楽しんでいました。どういうことか?
アイヌは北海道の土着の民で、日本人ではありますが、独自の文化、言語、価値観を持っています。作中では、非アイヌの日本人を「和人」と自分達とは分けて表現するくらいで、地続きの共通点を持ちながらも生活は大きく異なっていました。
その目立った違いに食文化があります。狩猟、採集を主とするアイヌは、獲れた獲物に感謝しつつ、無駄なく最大限に活用します。つまり、骨と皮以外は大体食べるってこと。脳みそも内臓も目玉も何もかもです。
作中、このギャップが何度も描かれます。
これ、獲物で獲ったリスを食べるシーンなのですが、まさにこういうシーンがヤンメイ自身の経験と重なります。多分、この杉元みたいな顔をして食べた物も色々あるんじゃないかなぁ、と同情しつつ深く共感してしまうのです。
ここで偉いのは、杉元が「俺、そういうの食べ慣れてないし」と言って、複雑かつ微妙な顔をしながらも、決してアイヌの食文化を拒否しないことです。もちろん、「私たちの食べ方に文句でもあるのか」と言われながらあんな顔をして見つめられれば、文句も言えないですけど。
それにしても、オエ〜っとかうわ〜っとか言わないのです。違うものは違う。慣れてないものは慣れてない。でも拒否はしない。これって、異文化交流の基本にしてキモだと思います。相手への尊重ですよ!
国際結婚をすると、特に食べ物ギャップがあります。中国人は特に色々食べますし、アイヌのように肉食の歴史が長いせいか無駄なく食べるので。えっ、これも食べるの?ここまで食べるの?みたいな食材も普通で。杉本の驚きは他人事とは思えません。
振り返れば結婚以来、豚の軟骨、鳥の足、鴨の頭、羊の舌、スッポンの甲羅などなど、日本人の一般的な食生活にはないものを色々食べる機会がありました。食べてみればそれぞれ普通に美味しかったです。(慣れも必要)
中東、アフリカ、南米、欧州でもそれぞれにお互い食べない物を食べているはず。最近も、北欧を旅行した友人が、トナカイの肉がデフォルトで出るのが食べられなかったと言っていましたし。国際結婚者はここに共感出来る分、普通の人達よりさらにこの作品を楽しめると思います。旅行好き、外国好きの方にもこの感覚は当てはまるかな?
ゴールデンカムイの面白さ
もちろん、本作の面白さはそれだけではありません。魅力はたくさんあるのですが、以下にざっと並べると。
アイヌ文化の紹介
この作品を読んでいると、アイヌのウンチクがじわじわ頭に入ってきます。押し付けがましくない流れなのですが、特に、狩猟を通して自然と向き合う様々なシーンで、アイヌの考え方をアシリパは杉元に伝えていきます。自然と一体に生きることの素晴らしさ、というか、我々は自然の一部であり、それを損なうことの愚かさに気付かされるのです。
とはいえ、もはや明治も遠い昔。すでに現実の世には作中に描かれたアイヌはどこにもいないことを思うと、なんだか切なくなるのですけど。
明治人の生き様
同様に、作中には様々な異種異能の変人達がたくさん出てきます。もちろん、これらはフィクションで、本当の明治時代にもこんな人達はいたはずがないのですが。それでも、ギラギラと生きる意志を剥き出しに困難に立ち向かう人々は、明治人ってこんなガッツがあったんじゃない?と思わせるのです。
作中、杉元をはじめとする登場人物達は、現代の我々から見るとかなり貧弱な装備で冬の北海道にたたずんでいます。まぁ、薄っぺらな寒そうな服装なワケです。実際の明治人の冬装備というのもそんなものだったようです。当たり前ですが、今のような軽くて暖かい服など存在しませんものね。現代と比べると困難がデフォルトなので、簡単にはへこたれない感じ。すぐ心が折れた、とか言ってる場合ではありません。
作中のキャラ達は生に執着し、粘り強く戦います。その粘り強さは、あるいは明治という時代が作ったのかなぁ、と想像してしまいます。その姿が生き生きとしているところが、また本作を魅力的にしています。
まるで余談ですが、大正生まれの大叔父がおりまして。ヤンメイから見ればメチャクチャ頑固者だったのですが。その彼をして「明治の人はシャンとしていた。自分達、軟弱な大正モンとは比べられない。明治人の気骨はスゴかった」と言わせるくらいなので。本当に明治人は強かったのでしょう。
痛そうな格闘(ネタバレ)
これは魅力と言っていいのか。ヤンメイは好きなのですが。作中の戦いの描写には度々ドキリとさせられます。とにかく痛そう。
派手なシーン、残酷なシーンというのは他の作品にもたくさんありますが。思わず「うわっ!」と言ってしまうような衝撃的なシーンが作中に度々あります。なんというか、そのインパクトは他に類のないものです。
人が一回転して吹っ飛ぶとか、膨れ上がって爆発するとか、一刀に真っ二つとか、そういう既視感のある描写ではないのです。
頬を団子のクシで貫かれるとか、頭蓋骨から顔の皮が剥がれるとか。ちょっと想像を超えた描写のオンパレード。こんな表現があったか!とびっくりさせられます。
そんな裏切られ方がちょっとクセになります。
命は有限
主人公は「不死身の杉元」と呼ばれています。しかし、実際は不死身ではありません。古くはゲゲゲの鬼太郎の頃から不死身キャラはあり、特に昨今、不死身キャラは飽和している感があります。彼らは本当に死なないか、メチャクチャ死にヅラい、そういう設定です。いわばお化け、化け物の類です。
それと比べると、杉元はかなり頑丈ですがただの人間です。多分、普通に死にます。刃物で胸を刺されても肋骨で止まっていたり、鉄砲で撃たれても運良く当たりどころが良かっただけで、体の仕組みとしては致命傷を受ければ死ぬ存在です。
ただ、それを「俺は不死身の杉元だぁ!!」と自己暗示にも似た強い精神力を発揮して、迫りくる死を紙一重ギリギリで跳ね除けていきます。
そのスリルというか、ピンチの後に命が繋がっていた時のホッとする感じは、不死身モノにはないドキドキです。
アニメについて
祝アニメ化とか言って書き出したので、アニメについても少し。
2018年4月より、深夜枠でアニメも始まりました。録画して、ディズニーとアンパンマン以外のアニメを久々に観ました(まだ1話だけ)。丁寧にお話を追っていましたね。でも、さすがに広範な視聴者を相手にする地上派で、あの血みどろの描写は出来ませんから。胸をギュッと掴まれるような命の切迫感はありませんでした。熊のCG描写とかに現代を感じましたけど。
一巻無料キャンペーンで読み始めたら止まらなくなり、たちまち全巻揃えてしまった漫画と違い、アニメに関しては暇な時にスキマ時間で観ればいいかな、くらいのハマり具合でした。完全にヤンメイ個人の感覚ですよ。
ただ、漫画では分からないアイヌ語の発音なんかは気になります。例えば、作中で「ヒンナ」という単語があるのですが。これが、平手打ちの「ビンタ」と同じイントネーションか、地名の「銀座」と同じイントネーションか。こんなのが分かるという点で、やっぱりアニメも無視は出来ませんね。
特殊なエロあり
色々褒めていますが、青年漫画雑誌なので、それなりにお色気シーンもあります。それ自体は驚くには当たらないのですが。ちょっと特殊なエロも登場します。それがこれら。
どのあたりの需要に応えてるのか分かりませんけど、これも異文化と言えば異文化?決してメインの流れではないのですが、エロに関しても多様化した好みに対応していると言えます(笑)。こーゆーのダメな人はご注意下さい。
まとめ
とにかく、久々に続きが気になって止まらない作品でした。
アクション、ギャグ、グルメ、ネイチャー、歴史、お色気と色んな側面が楽しめますが、やはり一番の魅力は異文化交流のギャップです。
お互いの違いに徐々に慣れて理解をする。同化して混じり合う部分もある。
舞台は明治と過去ですが、これから我々がもっと頻繁に体験することになる、異文化と交流する社会という未来を描いているようにも思えます。
まぁ、理屈はさておき読んでみて下さい。多分、1巻を読んだ時点で引き返せなくなること請け合いです!そんなゴールデンカムイの紹介でした。