ウチのカミさん中国人 ~毎日が異文化~

国際結婚したい人の夢を壊さないといいな。国際結婚の現実、いいとこ悪いとこ盲点、みんなお話しします。

日本は死が身近にある国だった

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あー、最初に断っておくと、別に日本は病気とかテロとかで簡単に人が死ぬ国だ、というお話ではないですよ。遺体とかお墓とかの距離が生きている人から物理的に近い、という話です。

???

よく分からないと思います。

まぁ、我々日本人が普通に行っていることが、なかなか外国人にはびっくりな習慣だったりするのです。

ヤンメイ、ここ数年の内に親を亡くしてまして。ヤンメイ妻も日本の葬儀に参加してくれました。そこで妻は義理の親の死自体もそうですが、そのあまりの習慣の違いにも大いにショックを受けたようです。

今回は、そんな日中の葬儀習慣のギャップのお話。

なぜ日本はあちこちにお墓があるの?

日本に来た中国人が驚くことはたくさんありますが、その中でもあまり語られないけど明らかに違和感を感じられていることの1つはお墓の問題です。

日本では割とお墓はそこここにあります。散歩をしていても、ふとした一隅が墓地になっていてもそれほど驚くことはありません。というか、生活圏内に墓地があることが普通な光景になっていて、スルーされている感すらあります。

さすがに、自宅の目の前や裏が墓地というのはやや敬遠されるかもしれませんが。それでも、お寺と繋がっている墓地であれば、むしろ寺社の一部で清浄だとか、霊的に安定している、と逆張りで(安さを求めて?)そうした場所を積極的に住居に選ぶ人々も一定数いると聞きます。

都心だと大型の霊園や墓地も多く、墓地を持たないお寺もあるので、飛び地のような小さな墓地はあまりみないかも知れません。でも、街中のお墓自体は凄く珍しいものではないと思います。

これ、中国ではとても珍しいのです。

墓は墓!住居は住居!

同じ地域に存在するものではないのです。住居街に突然現れる墓地。これは中国人的にはアンビリーバボーな、あり得ない光景です。

中国人にとってのお墓

中国でも現在の葬儀は火葬が主体です。遺骨をお墓に納めるところも同じです。ついでに言うと、お墓の形状も日本と似ていて、四角い暮石を建てます。

ですが、そのお墓の場所は郊外です。うんと郊外です。生者の生活圏と交じり合わない距離にお墓を置きます。

というのも、中国人にとっては死は穢れで、死者は例え親子と言えど、もはや別世界の住人なのです。なので、極力生きている人の世界とは距離をおくべき存在になっています。

もっと言うと、死者は生者を呼ぶ、というか、死者と関わると生きている者はどんどん弱って死んでしまうので、なるべく近寄らない、遠ざけておく、そういう考えなのだそうです。

悲しいとか悲しくない、ではなく、そういう習慣で、それが当たり前になっています。インド人が左手ではご飯を食べないとか、日本人がお茶碗のご飯に箸を突き立てないとか、そういうものと同根かと。

死んだ者は生きている者から遠ざける。

原則はシンプルです。その発想からすると、住宅街にお墓があるのって、中国人からすると、なんとも奇妙な恐ろしい光景らしいです。

日本の葬儀にびっくり

その原則からすると、日本人の葬儀は死者に近過ぎるのです。具体的には、日本では納棺時に、遺族が遺体を拭き清めたり、死装束(手甲、脚絆など)を着けたり、遺体に触れる機会がままあります。

火葬してしまったら最後、もう二度と触れることは出来ないし、一連の行為は日本人なら割と抵抗なく行っているのではないか、と思いますが。

これ、中国人にとってはありえません。中国ではお棺に花や物を添えるために近づくことはあっても、遺体に触れることはまずないそうです。拭くとか服を着せるとか、無理無理無理無理っ!って感じ。

そういうのはみんな納棺士の仕事です。遺族は基本、棺を遠巻きに見送る程度で、遺体に近づいたりはしません。これは、中国人は冷たいとか情がないとかではなく、そういう習慣、慣れの問題です。

例えば、我々は普通に牛や豚を食べるけど、屠殺の現場は知りません。キレイに処理されたものを買ってきます。中国では、肉を骨付きや原型をとどめて売っていたり、頭を丸ごと売っていたりもするので、日本人にとっては生々しく映ると思います。食べる度に屠殺しろ、とか言われたら、お肉は食べられなくなる人も多いでしょ?きっと。

人にはよっては「内臓温かいとか無理!」とか「牛の生首と目が合うとかあり得ない!」って方もいるのと近い感じでしょうか?まぁ、慣れない人にはショッキングな光景だということです。

後日わかったことですが、習慣だから、と内心の抵抗感を押し殺して葬儀に参加してくれた妻は、その後ショックが抜けるのにかなりの時間がかかったみたいです。

国際お墓の行方

仏壇に手を合わせるのは平気みたいなんですけどね。でも、中国人には仏壇の習慣もありません。タイには仏壇があるようですが、中国にないのは伝統なのか文革以降なのか。まぁ、最近は日本の都市部でも仏間や仏壇は減りつつありますけど。

一方、中国では遠くにあるとはいえお墓自体はちゃんと存在しています。むしろ、日本では自然葬とか散骨とか子孫に負担をかけないスタイルがじわじわと広がっていて、文革なんかないのにお墓や祖先を崇拝する文化が廃れてきているのが皮肉というか面白いというか。

いや、実際問題、国際結婚が増えてくると、先祖伝来の墓を守るとかも難しくなってきます。国際結婚家庭のお墓問題、色々ありそうですね。

 

ともあれ、中国人にとって、日本はお墓も遺体も近くてびっくりだ、というお話でした。